【言葉のツボ】小さな一歩、大きな飛躍……/by アポロ11号・アームストロング船長

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■「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍だ」(ニール・アームストロング)

こんにちは、松鷹守です。

いやなに、今は2017年11月だし、だいぶ寒くなってきたし、中秋の名月は10月4日でとっくに終わってますから「月」の話題なんて時季外れなのはわかってますけど、今日は史上初の月面着陸を果たしたアポロ11号ニール・アームストロング船長「あの言葉」を取り上げます。

というのも、私は最近このブログを始めたんですが、ブログ名を決めるさい「有名な言葉とかフレーズを使った名前はどうか」と思ったんですね。で、せっかくなのでなるべくカッコよくて壮大でワクワクするようなものを考えているうち、冒頭の言葉が頭に浮かんだわけです。

それで『小さな一歩、大きな飛躍』『スモール・ステップ/ジャイアント・リープ』などの名称にしようとしたんですが、念のためググったら、同じような名前のブログがあったのでやめました。

ただそのとき、冒頭の言葉について調べていて「あるエピソード」のことを知ったので、ちょっと面白いから書いておきます。

■「That’s  one  small  step  for  (a)  man,  one  giant  leap  for  mankind.」

1969年7月20日(日本時間21日)、アメリカ合衆国の打ち上げたアポロ11号の着陸船イーグルが月面に着陸。船長のアームストロングが、人類で初めて月面に第一歩を記したときに発したのがこの言葉。

有名なセリフですね。おしゃれで、クールで、対句になっていて詩的な味わいがあります。本人が考えたのか、NASAがあらかじめ用意したのかはわかりませんが、歴史的な瞬間にふさわしい、万人の心に響く名言です。

最高の決めゼリフなんだけど、アームストロングさん、1ヵ所間違えてしまいました。「for a man」の「a」を抜かしてしまったんです。「a man」なら「一人の人間」ですが、「man」だと「人類」という意味なので、彼の言葉を訳すと「これは人類にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍だ」になってしまいます。

ああ、せっかくの名言が!

■言ったの? 言わなかったの?

もちろんアームストロング船長は「a man」と言うつもりだったでしょう。だって「man」じゃ意味が通らないもの。

このときの動画は〈YouTube〉で視聴できます。私も観てみたんですが、「a」を言ってるのか言ってないのか、よくわかりませんでした(言ってるようにも聞こえますが……)。

この音声について、「アームストロングは 〃a man〃 と発音している。当時の通信技術はそれほど高くなかったので、〃a〃 の音が拾えなかっただけだ」と主張する音響の専門家がいるそうです。しかし一方で、「いやいや、よくよく調べたけど、やっぱり 〃man〃 としか言ってないよ」という人もいるとか。

■人間だもの(by にーる)

でもね皆さん、かりに「a」を抜かしちゃったとしても、全然問題ないと思いませんか? アームストロングの言わんとすることは明らかだし、「a」がないためにかえってよりリズムが出て印象が深まったという声もあるほどで。

誰でもふだん会話しているとき、ちょっとした言い間違いをすることがありますよね。「てにをは」が違っちゃったとか、一文字抜かしちゃったとか。日常生活でもそうなのに、このときのアームストロングさん、人類最大のミッション中なわけですよ。世界中が固唾をのんで見つめているわけですよ。緊張マックス、心臓バクバク、とてつもないプレッシャーがあったでしょう。

しかも船外に出るさい、こんなことがありました。着陸船イーグルのハッチは開発過程でサイズを小さく変更していたにもかかわらず、宇宙服の背中の生命維持装置のサイズはそのままだったため、外へ出るのにもの凄く苦労したそう。船を出入りするたび、宇宙飛行士の心拍数は限界レベルまで跳ね上がったといいます。

彼ら飛行士のスケジュールは分刻みで決まっていたから、そりゃ焦りますよ。

こんな重圧の中ですから、「a」の音を飛ばしちゃったくらいのこと、あっても不思議じゃありません。ていうか、ない方がおかしいくらいの状況なわけで。

アームストロング船長はきわめて沈着冷静な人物だったそうですが、彼もまた一人の人間だったということですね。

■まとめ

知力・体力・人格ともエリートの塊みたいな人が、こんな小さなミスをやってしまう。私はそこに親近感を覚えます(ミスといっても、飛行計画そのものには何の影響もありませんし)。

むしろ、こういうエピソードが加わったことで、「アポロ11号伝説」の厚みがさらに増したと言えるんじゃないでしょうか。

アームストロングはのちに「a」を省略してしまったことを認めました。そして「もし間違っていたとしても、歴史が私の間違いを許す寛容さを持つことを希望する」という内容の発言をしています。

うーん、ナイスですね。おしゃれです。

さらに彼、着陸時の名言が文章で引用されるときは「a」の前後に括弧をつけるのが好みなんだそう。

真面目でありながら、こういう茶目っ気のあるところがまた素敵です。

〔※アームストロング氏は2012年、82歳で亡くなられました。〕

■おまけ

最後に、私が今までに観た宇宙にまつわる映画をご紹介しましょう。

『ライトスタッフ』

【製作年・国】1983年、アメリカ

【監督】フィリップ・カウフマン

【出演】サム・シェパード、スコット・グレン、エド・ハリスほか

【概要】米国初期の有人宇宙飛行〈マーキュリー計画〉に参加した7人の宇宙飛行士をめぐる、実話にもとづくドラマ。

トム・ウルフのノンフィクション小説『ザ・ライト・スタッフ』(中公文庫)を映画化。

♠松鷹メモ♠ 映画を観たのも原作を読んだのも、ずいぶん昔。〈アポロ計画〉は月を目指したが、それに先立つ〈マーキュリー計画〉は人間を地球周回軌道にのせ、無事帰還させるものだった。宇宙飛行黎明期ならではのさまざまな困難や苦労があり興味深い。原作は分厚いですよ!

『アポロ13』

【製作年・国】1995年、アメリカ

【監督】ロン・ハワード

【出演】トム・ハンクス、ビル・パクストン、ケヴィン・ベーコンほか

【概要】1970年、酸素タンクの爆発事故により月面着陸がかなわず、数々のピンチをくぐり抜けて地球へ無事帰還したアポロ13号。「輝かしい失敗」と称えられた実話を描く感動の作品。

♠松鷹メモ♠ これでもか、これでもかと次々発生する故障や困難を、船長ジム・ラヴェル(T・ハンクス)ら3名の宇宙飛行士とヒューストン管制センターのスタッフが必死で乗り越えるさまは緊迫感たっぷり。現実によくこんなことができたな、と驚嘆せずにはいられない。

 『ザ・ムーン』

【製作年・国】2007年、イギリス

【監督】デヴィッド・シントン

【出演】バズ・オルドリン(アポロ11号でアームストロングとともに月面到達)、ジム・ラヴェル(アポロ13号船長)ほか

【概要】アポロ計画の歩みを綴ったドキュメンタリー。月面に降り立った元宇宙飛行士らの証言や、NASA秘蔵の映像を多数使用。

♠松鷹メモ♠ バズ・オルドリンの語る、初の月面着陸の様子など必見。不要になったロケット後部が切り離され、宇宙の彼方へゆっくり消えていく静かなシーンが、切なく美しい。

それにしても、元宇宙飛行士たちはみな高齢。もっと早くこういう映画を作れなかったのかな。


以上、松鷹守でした。

〈ゆるやかな惑星〉でまたお会いしましょう!

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